基本情報
構造
- 分子式
- C17H11N5
- 分子量
- 285.30 g/mol
- 分類
- 非ステロイド系アロマターゼ阻害薬(第3世代)
性質
- 投与経路
- 経口
- 作用機序
- 可逆的競合阻害
歴史
誕生
レトロゾール(Letrozole)は、1990年代に開発された第3世代の非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(AI)です。「フェマーラ(Femara)」の商品名で広く知られています。アナストロゾールと同様にアロマターゼ酵素を阻害しますが、さらに強力な阻害能を持つことが報告されています。[1]
医療
主に閉経後女性の乳がん治療において、外科手術後の補助療法や、進行性乳がんの第一選択薬として使用されます。また、排卵障害を伴う不妊症の治療(排卵誘発)においても、クロミフェンに代わる選択肢としてオフラベルで使用されることがあります。[1][4]
ボディビル
アナボリックステロイド(AAS)のサイクル中において、他のAI(アナストロゾール等)では十分にコントロールできない女性化乳房の兆候が見られる場合などに、より強力な対策として利用されることがあります。しかし、その強力すぎる抑制能ゆえに、適切な用量管理が極めて困難な薬剤でもあります。[3]
特徴とリスク
特徴
レトロゾールの最大の特徴は、市販されているAIの中で最も強力なエストロゲン抑制能を持つ点にあります。
- 圧倒的な阻害能: 理論上、体内のエストロゲン産生をほぼ完全に(98%以上)停止させることが可能ですが、男性の場合は精巣内でのアロマターゼ活性が阻害されにくいため、血中濃度の抑制率は約80%前後にとどまるという報告もあります。[2][3]
- 長い半減期: 半減期が約2〜4日と長いため、血中濃度が定常状態に達するまでに2〜6週間を要することがあります。このため、一度エストロゲンを下げすぎると、回復にも時間がかかります。[1]
- テストステロン上昇: エストロゲンを強力に抑えることで、下垂体からのゴナドトロピン分泌を強力に刺激し、内因性テストステロン濃度を上昇させます。[4]
リスク
エストロゲン・クラッシュ
レトロゾールはあまりに強力であるため、容易にエストロゲンを必要レベル以下に低下(クラッシュ)させてしまいます。これにより、深刻な性欲減退、勃起不全、極度の疲労、気分の落ち込み、関節の激痛などを引き起こします。
脂質プロファイルへの悪影響
エストロゲンを強力に抑制しすぎることで、HDL(善玉)コレステロールを低下させ、心血管リスクに不利な方向へ働く可能性があります。[5]
骨健康への深刻な負荷
エストロゲンの枯渇は骨代謝に壊滅的な影響を与え、短期間の使用でも骨密度の低下や骨折リスクの増大を招く可能性があります。[2]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、レトロゾールは「S4. ホルモン調節薬および代謝調節薬」に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[6]
出典
- DailyMed: Femara- letrozole tablet (DailyMed / NLM / Overview) ↩
- Buzdar AU. An overview of the pharmacology and pharmacokinetics of the newer generation aromatase inhibitors anastrozole, letrozole, and exemestane. Cancer. 2002;95(9):2006-2016. (DOI / Overview) ↩
- de Boer H, et al. Letrozole normalizes serum testosterone in severely obese men with hypogonadotropic hypogonadism. Diabetes Obes Metab. 2005;7(3):211-215. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- Franik S, et al. Aromatase inhibitors for subfertile women with polycystic ovary syndrome. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2018;2018(5):CD010287. (DOI / Overview) ↩
- Dougherty RH, et al. Effect of aromatase inhibition on lipids and inflammatory markers of cardiovascular disease in elderly men with low testosterone levels. Clinical Endocrinology. 2005;62(2):228-235. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩