基本情報
構造
- 分子式
- C26H37N5O
- 分子量
- 451.60 g/mol
- 分類
- ドーパミン受容体作動薬(麦角アルカロイド誘導体)
性質
- 投与経路
- 経口
- 作用機序
- D2受容体への選択的結合
- 主な作用
- プロラクチン分泌の抑制
歴史
誕生
カベルゴリン(Cabergoline)は、1980年代にイタリアのファルミタリア(現在はファイザー傘下)によって開発された長時間作用型のドーパミン受容体作動薬です。「カバサール(Cabaser)」や「ドスチネクス(Dostinex)」の商品名で知られています。従来のブロモクリプチンに比べ、副作用が少なく、作用時間が大幅に長いことが特徴です。[1]
医療
主に高プロラクチン血症(乳汁漏出症、無月経、不妊症など)やプロラクチン産生腺腫の治療に使用されます。また、ドーパミンを補充する目的でパーキンソン病の治療にも用いられます。[1][3]
ボディビル
アナボリックステロイド(AAS)、特に19-ノル系(ナンドロロンやトレンボロンなど)の使用に伴うプロラクチンの過剰上昇を抑えるために利用されます。プロラクチンの抑制により、性欲の維持や回復の促進を目的として組み込まれることがあります。[4]
特徴とリスク
特徴
カベルゴリンの最大の特徴は、下垂体のドーパミンD2受容体に高い親和性を持って結合し、強力かつ持続的にプロラクチンの分泌を抑制する点にあります。
- プロラクチン抑制: ドーパミンは体内でプロラクチン分泌を抑制するホルモンとして働きます。カベルゴリンはそのドーパミンの働きを模倣することで、プロラクチン値を劇的に低下させます。[1][5]
- 19-ノル系副作用への対応: ナンドロロンやトレンボロンはプロゲステロン受容体を刺激し、プロラクチンの上昇を招くことがあります。これにより起こる性欲減退(いわゆるDeca Dick)や女性化乳房、乳汁漏出の対策として有効です。[6][7]
- 不応期の短縮: 男性において、射精後の不応期(再び勃起できるようになるまでの時間)を短縮し、性機能を向上させる効果が一部の研究で示唆されています。[4]
- 長時間作用: 半減期が極めて長いため、週に1〜2回の投与で十分な効果が得られます。[1][8]
リスク
心臓弁膜症
高用量(特にパーキンソン病治療レベル)で長期間使用した場合、心臓の弁膜症のリスクが高まることが報告されています。ボディビル用途での低用量使用におけるリスクの程度については議論がありますが、定期的な心エコー検査などの監視が推奨されることもあります。[7]
精神面への影響
ドーパミン受容体に作用するため、幻覚、妄想、あるいはギャンブルや過食などの衝動制御障害(病的賭博など)が副作用として報告されています。[1]
消化器症状
ブロモクリプチンよりは軽微ですが、吐き気、嘔吐、胃の不快感、めまいなどが現れることがあります。[8][9]
血圧への影響
起立性低血圧を引き起こす可能性があるため、立ちくらみなどに注意が必要です。[1]
競技規制上の扱い
カベルゴリン自体は、現在のWADA禁止表において明示的な禁止物質には指定されていません。ただし、他のホルモン調節薬との併用や、下垂体機能への影響の観点から注意が必要です。
出典
- DailyMed: Dostinex- cabergoline tablet (DailyMed / NLM / Overview) ↩
- Del Dotto P, et al. Clinical pharmacokinetics of cabergoline. Clinical Pharmacokinetics. 2003;42(7):633-645. (DOI / Overview) ↩
- Selvarajah D, et al. Effectiveness of adding dopamine agonist therapy in the management of acromegaly. European Journal of Endocrinology. 2005;152(4):569-574. (DOI / Overview) ↩
- Kruger TH, et al. Effects of acute prolactin manipulation on sexual drive and function in males. Journal of Endocrinology. 2003;179(3):357-365. (DOI / Overview) ↩
- De Rosa M, et al. Cabergoline treatment rapidly improves gonadal function in hyperprolactinemic males. European Journal of Endocrinology. 1998;138(3):286-293. (DOI / Overview) ↩
- Pivonello R, et al. Dopamine receptor expression and function in human normal adrenal gland and adrenal tumors. The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. 2004;89(9):4493-4502. (DOI / Overview) ↩
- Ricci E, et al. Pregnancy outcome after cabergoline treatment in early weeks of gestation. Reproductive Toxicology. 2002;16(6):791-793. (DOI / Overview) ↩
- Bolko P, et al. The assessment of cabergoline efficacy and tolerability in patients with pituitary prolactinoma. Polskie Archiwum Medycyny Wewnetrznej. 2003;109(5):489-495. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- Miwa H, et al. Hair loss induced by dopamine agonist. Parkinsonism & Related Disorders. 2003;10(1):51-52. (DOI / Overview) ↩