心血管リスクで見る薬剤比較

心血管リスクは、単一の副作用ではなく、脂質、血圧、ヘマトクリット、心拍、心筋、血管内皮が重なって決まります。AAS使用ではHDL-C低下、LDL-C上昇、血圧上昇、赤血球増加、左室肥大、血栓性イベントなどが報告されています[1][2]。SARMsでもHDL低下や肝機能変化が報告され、FDAはSARM含有製品について心筋梗塞や脳卒中などの可能性を警告しています[3]

リスクを分ける4つの軸

見る項目問題になりやすい変化
脂質HDL-C、LDL-C、TG、ApoBHDL低下、LDL上昇、ApoB上昇
血圧家庭血圧、診察室血圧収縮期・拡張期血圧の上昇
血液粘度ヘマトクリット、ヘモグロビン赤血球増加、血栓リスク
心拍・電解質安静時心拍、運動時心拍、K/Mg頻脈、不整脈、動悸

この4軸は独立していません。血圧が高い状態でヘマトクリットが上がり、さらに刺激薬で心拍が上がると、個別には軽く見える変化でも心血管負荷は大きくなります。

薬剤群別の心血管論点

薬剤群主な論点詳細
AAS脂質、血圧、心筋、ヘマトクリット特に経口17αアルキル化AASや高用量アンドロゲン環境ではHDL低下、LDL上昇、血圧上昇が問題になります[4][1]
SARMs脂質、肝機能、心血管警告「ステロイドではない」ことは安全性の証明ではありません。FDAはSARM含有製品の心筋梗塞、脳卒中、肝障害などを警告しています[3]
EPO系ヘマトクリット、血液粘度、血栓Epoetin alfaの米国添付文書では、死亡、心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓塞栓症などのリスクが警告されています[5]
甲状腺ホルモン・β2作動薬心拍、心筋酸素需要、不整脈減量目的で使われる薬剤でも、頻脈や動悸が出る設計では有酸素運動の安全域が狭くなります。
利尿薬脱水、血圧低下、電解質異常水抜き目的の使用では、血圧と電解質が崩れ、不整脈や循環不全のリスクが上がります。

薬剤選択より先に検査値を見る

心血管リスクを下げる出発点は、薬剤名の印象ではなく検査値です。血圧・脂質・ヘマトクリットで扱うように、最低限でも家庭血圧、脂質、血算を追います。LDL-CやHDL-Cだけでなく、可能ならApoB、non-HDL-C、ヘマトクリット、ヘモグロビンも同じ時系列で見ます。

「体感が良い」「息切れしない」だけでは、脂質やヘマトクリットの悪化は見えません。AAS・PED文脈の心血管管理では、サイクル設計、検査値、カーディオ習慣、医療介入の必要性を一つの表に乗せて判断します。

出典

  1. Pope HG Jr, et al. Adverse health consequences of performance-enhancing drugs: an Endocrine Society scientific statement. Endocrine Reviews. 2014;35(3):341-375. (PubMed Central / Overview)
  2. Baggish AL, et al. Cardiovascular Toxicity of Illicit Anabolic-Androgenic Steroid Use. Circulation. 2017. (PubMed / NLM / Overview)
  3. FDA. FDA warns against use of SARMs among teens, young adults. (fda.gov / 2023 / Overview)
  4. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  5. DailyMed: EPOGEN - epoetin alfa injection, solution (FDA Label) (DailyMed / NLM / Overview)
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