基本情報
構造
- 分子式
- C20H30O2
- 分子量
- 302.45 g/mol
- 主な構造修飾
- 7α,11β-ジメチル-19-ノルテストステロン
性質
歴史
誕生
ジメチルナンドロロン(Dimethylnandrolone / DMAU)は、米国政府(NIHなど)の資金提供を受けて開発されている実験的なアナボリックステロイド(AAS)です。開発コード名「CDB-4521」としても知られています。
医療・開発
DMAUは主に、**「男性用経口避妊薬(男性用ピル)」**および男性ホルモン補充療法(ART)への応用を目的として研究されています。2019年に完了したフェーズ1臨床試験では、28日間の連続投与において良好な安全性と耐容性が示されました。投与中止後には、生殖能力が速やかに回復することも確認されています。[1][3]
ボディビル
現時点では実験段階の薬剤であり、一般的なステロイドユーザーの間で広く普及しているわけではありません。しかし、その圧倒的な理論的同化作用と、経口剤でありながら肝毒性が低い(17aaではない)という特性から、次世代のパフォーマンス向上薬として一部で注目を集めています。[2]
特徴とリスク
特徴
DMAUは、ナンドロロンの7位と11位にメチル基を追加した非常に強力な誘導体です。
- 驚異的な同化作用: ラットを用いた研究では、筋肉(肛門挙筋)への作用がテストステロンの約136倍に達すると報告されています。これは、同じ19-ノル系のMENT(トレストロン)をも上回る数値です。[2][1]
- 非アロマターゼ: 化学的にエストロゲンへ変換されないため、水分貯留や女性化乳房などのエストロゲン由来の副作用が理論上「ゼロ」です。[1]
- 5α還元を受けない: 7αおよび11βメチル基の存在により、5αリダクターゼによる還元を受けません。これにより、前立腺肥大や男性型脱毛、ニキビなどのアンドロゲン副作用のリスクが、従来のテストステロン製剤よりも低減されている可能性があります。[4]
- 肝毒性の回避: 17αアルキル化(17aa)ではないため、従来の経口ステロイドのような深刻な肝毒性を示さないことが臨床試験で示唆されています。[1]
リスク
強力な自己産生の抑制
男性用避妊薬として設計されているため、非常に低い用量でもLH、FSH、および内因性テストステロンの産生を強力かつ完全にシャットダウンします。投与中は血中のテストステロン値が極めて低くなりますが、DMAU自体がアンドロゲンとして機能するため、多くの被験者では低T症候群の症状は現れなかったと報告されています。[1]
脂質プロファイルと血液学的影響
臨床試験において、体重の増加、ヘマトクリット値の上昇、およびHDL(善玉)コレステロールの有意な低下が観察されています。これらは長期的には心血管系へのリスクとなる可能性があります。[1]
リビドーへの影響
一部の被験者で性欲(リビドー)の減退が報告されていますが、個人差が大きく、逆に向上したとする報告もあります。[1]
未知の長期的影響
DMAUはまだ開発段階にある薬剤であり、数ヶ月から数年にわたる長期使用の安全性については、十分なデータが存在しません。[1]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、ジメチルナンドロロンはS1のアナボリック薬(その他のアナボリック剤)に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]
出典
- Thirumalai A, et al. Effects of 28 Days of Oral Dimethandrolone Undecanoate in Healthy Men: A Prototype Male Pill. J Clin Endocrinol Metab. 2019;104(2):423-432. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- Bioorg Med Chem Lett. 2005;15(4):1213-1216. (DOI / Overview) ↩
- ClinicalTrials.gov: NCT01382069 (DMAU Phase 1 Study) (clinicaltrials.gov / Overview) ↩
- Attardi BJ, et al. Potent synthetic androgens dimethandrolone and 11beta-methyl-19-nortestosterone do not require 5alpha-reduction to exert maximal androgenic effects. J Steroid Biochem Mol Biol. 2010;122(4):212-218. (DOI / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩