エチルエストレノール

基本情報

構造

エチルエストレノールの構造式
分子式
C20H32O
分子量
288.47 g/mol [1]
主な構造修飾
19-ノル、17α-エチル、3-デソキシ(3位ケト基欠損)

性質

系統
ナンドロロン (19-nor)
投与経路
経口
17αアルキル化
あり [2]
AAR
200–400 : 20–40 [2]
半減期
約8〜12時間 [2]
有効期間
約8〜12時間
エストロゲン性
[2]
アロマターゼ活性
極めて低い [2]
プロゲスチン性
あり [2]

歴史

誕生

エチルエストレノール(Ethylestrenol)は、1959年にオルガノン社によって開発された19-ノル系の経口アナボリックステロイド(AAS)です。「マキサボリン(Maxibolin)」や「オラボリン(Orabolin)」の商品名で知られています。[2]

医療

手術後や慢性疾患に伴う筋消耗の抑制、骨粗鬆症、および成長不全の治療を目的として承認されました。特にアンドロゲン副作用が極めて低いことから、女性や子供の治療において有用な選択肢とされていました。[2][3][4]

ボディビル

筋量を大幅に増やす目的ではなく、主に除脂肪体重の維持やコンディション調整のために利用されてきました。現在では、人間用の医薬品としての供給は多くの国で終了しており、主に獣医学の分野で使用されることが多くなっています。[2]

特徴とリスク

特徴

エチルエストレノールは、ノルエタンドロロンの構造から3位のケト基を取り除いた、非常に珍しい「3-デソキシ」構造を持ちます。

  • プロドラッグとしての性質: 摂取後、体内で3位が酸化されることで活性本体であるノルエタンドロロンに変換されます。この変換プロセスにより、作用が非常に穏やかになっています。[2][3]
  • 極めて高い同化・アンドロゲン比: アンドロゲン作用が極限まで抑えられており、数あるAASの中でも最も「マイルド」な薬剤の一つとされています。[2]
  • 経口活性: 17α位のエチル化により、経口摂取での有効性が確保されています。[2]

リスク

肝毒性

17αアルキル化(17aa)されているため、肝臓への負担があります。長期間の使用は避けるべきであり、肝機能のモニタリングが必要です。[2][5]

脂質プロファイルへの影響

穏やかな薬剤ではありますが、他の経口ステロイドと同様に、HDLコレステロールの減少やLDLコレステロールの増加を引き起こす可能性があります。[2]

エストロゲンおよびプロゲスチン副作用

代謝物の性質により、高用量では水分貯留や女性化乳房、自己産生の抑制といった19-ノル系特有の副作用が現れることがあります。[2]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、エチルエストレノールはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[6]

出典

  1. PubChem: Ethylestrenol (PubChem / NCBI / Overview)
  2. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  3. IUPHAR/BPS Guide to Pharmacology: Androgen receptor ligands (includes ethylestrenol). (guidetopharmacology.org / Overview)
  4. PubChem: Norethandrolone. (PubChem / NCBI / Overview)
  5. LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview)
  6. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
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