メトリボロン

基本情報

構造

メトリボロンの構造式
分子式
C19H24O2
分子量
284.40 g/mol [1]
主な構造修飾
19-ノル、17α-メチル、4,9,11-トリエン

性質

系統
ナンドロロン (19-nor)
投与経路
経口
17αアルキル化
あり [2]
AAR
12000 : 6000 [2]
半減期
約2〜5時間 [2]
有効期間
約6〜8時間
エストロゲン性
なし [2]
アロマターゼ活性
なし [2]
プロゲスチン性
[2]

歴史

誕生

メトリボロン(Metribolone / Methyltrienolone)は、1960年代にラッセル・ウクラフ社によって開発された、化学的に極めて安定かつ強力な経口19-ノル系アナボリックステロイド(AAS)です。[2]

医療・研究

かつて乳がんの治療薬として臨床試験が行われましたが、その凄まじい肝毒性が判明したため、医療用としての開発は中止されました。現在は、研究室においてアンドロゲン受容体の測定や研究のためのリガンド(R1881)として利用されるのが主な用途です。[2][3]

ボディビル・スポーツ

あまりの毒性の強さから、最もリスクを厭わない競技者の間でも「禁忌」に近い扱いを受けることがあります。トレンボロンの経口版かつさらに強力なものと形容されることが多く、極めて限定的な場面でのみ話題に上ります。[2]

特徴とリスク

特徴

メトリボロンは、トレンボロンの構造に17位のメチル基を追加したものです。

  • 人類が合成した最強クラスのAAS: テストステロンの数千倍の同化およびアンドロゲン活性を持つとされています。その数値上の同化活性はテストステロンを100とした場合に12,000を超えます。[2]
  • 完全なアロマターゼ耐性: 化学構造上、エストロゲンに変換されることは一切ありません。[2]
  • 受容体への超強力な結合: アンドロゲン受容体に対して、他のどのステロイドよりも強固に結合します。[2][3]

リスク

致死的な肝毒性

経口ステロイドの中で、間違いなくトップクラスの肝毒性を持ちます。ごくわずかな量(ミリグラム単位以下)であっても、肝臓に深刻なダメージを与える可能性があります。[2][4]

強力な自己産生抑制

内因性テストステロンの産生を瞬時に停止させます。[2]

プロゲスチン副作用

トレンボロンと同様に強いプロゲスチン作用を持ち、エストロゲン変換がないにもかかわらず、女性化乳房や性機能障害、気分の変動を引き起こします。[2]

深刻なアンドロゲン副作用

脱毛、ニキビ、および激しい男性化症状が不可避と言えるほど強力に現れます。[2]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、メトリボロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]

出典

  1. PubChem: Metribolone (PubChem / NCBI / Overview)
  2. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  3. IUPHAR/BPS Guide to Pharmacology: Androgen receptor ligands (includes ethylestrenol). (guidetopharmacology.org / Overview)
  4. LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview)
  5. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
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