基本情報
構造
- 分子式
- C20H30O2
- 分子量
- 302.45 g/mol [1]
- 主な構造修飾
- 19-ノル、7α,17α-ジメチル
性質
歴史
誕生
ミボレロン(Mibolerone)は、1960年代にアップジョン社によって開発された極めて強力な経口19-ノル系アナボリックステロイド(AAS)です。「チェック・ドロップス(Cheque Drops)」の商品名で知られています。[2]
医療・獣医学
人間用の医薬品として承認されたことは一度もありません。主に獣医学の分野で、雌犬の発情を抑制(避妊)するための液剤として開発・使用されてきました。現在は、その極度の毒性と副作用から、獣医学の現場でも使用されることは少なくなっています。[2][3]
ボディビル・パワー競技
「世界で最も強力かつ毒性の強いステロイドの一つ」として、競技者の間では特殊な用途でのみ語られます。特に、試合や競技の直前に攻撃性を極限まで高める(アドレナリンを出す)ための「プレワークアウト」的な位置付けで、ごく短期間のみ使用されることがありました。[2]
特徴とリスク
特徴
ミボレロンは、ナンドロロンの7位にメチル基、17位にメチル基を追加した構造を持ちます。
- 圧倒的な受容体結合親和性: アンドロゲン受容体に対して、テストステロンの数倍、メチルテストステロンの数十倍の結合強度を持つとされています。これにより、極微量でも劇的な効果を発揮します。[2][3]
- 攻撃性の劇的な向上: 中枢神経系への作用が非常に強く、一時的に凄まじい攻撃性や集中力をもたらします。[2]
- 経口活性と放出速度: 17αアルキル化(17aa)により経口で作用しますが、半減期が非常に短いため、血中濃度は急峻に上下します。[2]
リスク
深刻な肝毒性
あらゆるAASの中で、最も肝臓への負担が重い薬剤の一つです。極めて低用量であっても、数週間の使用で重篤な肝機能障害を引き起こすリスクがあります。[2][3]
強力なプロゲスチン作用
アンドロゲン受容体だけでなく、プロゲステロン受容体に対しても非常に高い親和性を持ちます。これにより、エストロゲン変換がないにもかかわらず、深刻なプロラクチン上昇や女性化乳房、性機能障害を引き起こす可能性があります。[2][3]
激しいアンドロゲン副作用
極めて強力なアンドロゲン作用により、重度のニキビ、急速な脱毛、および深刻な男性化を引き起こします。[2]
精神的な不安定さ
攻撃性の向上は諸刃の剣であり、コントロール不能な怒りや焦燥感、情緒不安定を招くリスクが非常に高いです。[2]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、ミボレロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[4]
出典
- PubChem: Mibolerone (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩