基本情報
構造
- 分子式
- C19H28O2
- 分子量
- 288.42 g/mol [1]
- 主な構造修飾
- 19-ノル、7α-メチル
性質
歴史
誕生
トレストロン(Trestolone)は、1960年代に開発された強力な19-ノル系アナボリックステロイド(AAS)で、「MENT(7α-methyl-19-nortestosterone)」の略称で広く知られています。人口評議会(Population Council)によって男性用避妊薬およびホルモン補充療法の候補として研究されてきました。[2][3]
医療・研究
男性の避妊(精子形成の抑制)と、アンドロゲン欠乏症の治療を同時に行うための理想的なアンドロゲンとして長年研究されています。テストステロンと比較して前立腺への影響が少ない(5α還元を受けない)一方で、筋肉や骨への効果が非常に高いことが注目されています。現在も医薬品としての開発プロセスが進められている段階にあります。[3]
ボディビル
近年、「トレンボロンより強力で、テストステロンより副作用が少ない」という触れ込みで注目を集めるようになりました。バルクアップにおいて極めて強力な筋量増加をもたらす薬剤として、高度な知識を持つユーザーの間で話題になります。[2]
特徴とリスク
特徴
トレストロンは、ナンドロロンの7α位にメチル基を追加した構造を持ちます。
- 驚異的な同化活性: テストステロンの約10倍、ナンドロロンの数倍の同化活性を持つとされています。AARは2300:650と非常に高く、少量の投与で劇的な筋肥大が期待できます。[3][4]
- 前立腺への安全性の追求: 5α還元酵素によってDHTのようなより強力なアンドロゲンに変換されないため、テストステロンよりも前立腺肥大のリスクが低いと考えられています。[3][4]
- 男性機能の維持: 多くの19-ノル系(デカ等)が性欲減退を招くのに対し、トレストロンはそれ単体でも生理的なアンドロゲン要求を満たし、性機能を維持できる可能性が研究されています。[3][4]
リスク
強力なエストロゲン作用
アロマターゼによって変換される代謝物(7α-メチルエストラジオール)は、通常のエストラジオールよりも活性が強く、女性化乳房や深刻な水分貯留を引き起こすリスクが高いです。強力なアロマターゼ阻害薬(AI)の管理が必須となることが多いです。[2]
迅速かつ強力な自己産生抑制
避妊薬として研究されていることからも明らかなように、極めて短期間で内因性テストステロンおよび精子の産生をシャットダウンします。[3][4]
プロゲスチン・プロラクチンの影響
他の19-ノル系と同様、プロゲスチン作用による副作用(乳腺への影響など)を考慮する必要があります。[2]
長期的な安全性の未確立
医療用として一般に普及している薬剤ではないため、長期間の使用による人体への影響については、既存のAAS以上に未知の領域が多いと言えます。
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、トレストロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]
出典
- PubChem: Trestolone (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- Sundaram K, et al. 7 alpha-Methyl-19-nortestosterone (MENT): the optimal androgen for male contraception. Ann Med. 1993;25(2):199-205. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- Sundaram K, et al. 7alpha-methyl-19-nortestosterone (MENT): the optimal androgen for male contraception and replacement therapy. Int J Androl. 2000;23 Suppl 2:13-15. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩