エピチオスタノール

基本情報

構造

メチルエピチオスタノール(エピスタン)の構造式
分子式
C20H30OS
分子量
318.52 g/mol
主な構造修飾
17α-メチル、2α,3α-エピチオDHT

性質

系統
DHT
投与経路
経口
17αアルキル化
あり [1]
AAR
1100 : 91 [2]
半減期
約6時間
エストロゲン性
なし(抗エストロゲン作用) [1][2]
アロマターゼ活性
なし [2]
プロゲスチン性
なし

歴史

誕生

エピチオスタノール(Epitiostanol)は、1960年代に日本(塩野義製薬)で開発されたユニークな化学構造を持つアナボリックステロイド(AAS)です。2006年頃から「エピスタン(Epistane)」という名称で「プロホルモン(サプリメント)」として市場に再登場し、ボディビル界で急速に普及しました。[1][2]

医療

医療用としては、特に日本において乳がんの治療(抗エストロゲン療法)や、体格消耗の改善を目的として使用されていた歴史があります。エストロゲン受容体に拮抗する性質を持ち、タモキシフェンとの併用による乳がん治療の成功例も報告されています。[1]

ボディビル

エピスタンは、体脂肪を極限まで削ぎ落とす減量期(カッティング)や、脂肪を増やさずに筋量を増やす「クリーンバルク」において非常に高く評価されています。強力な同化作用を持ちながら、エストロゲン由来の副作用がないため、競技者のコンディショニングに重宝されます。[2]

特徴とリスク

特徴

エピスタンの最大の特徴は、DHT骨格の2位と3位に硫黄原子を含む「エピチオ基」を持つ点にあります。

  • ドライな筋肉美: 水分貯留を全く引き起こさず、筋肉のディテール、血管の視認性、ストリエーション(筋線維の筋)を際立たせます。[2]
  • 抗エストロゲン作用: それ自体がエストロゲン受容体に対して拮抗的に作用することが報告されています。これにより、サイクル中の女性化乳房のリスクを軽減する助けとなります。[1][2]
  • 筋力の大幅な向上: 体重の増加は控えめですが、挙上重量の大幅な向上が期待できるとされています。

リスク

肝毒性

17αアルキル化(17aa)製剤であり、肝臓への負担は無視できません。使用期間は4〜6週間以内に制限し、適切な肝保護対策を講じる必要があります。[1][3]

関節痛(ドライジョイント)

エストロゲンを強力に抑える「ドライ」なステロイドに特有の副作用として、関節内の潤滑が不足し、鋭い関節痛(ドライジョイント)を引き起こすことがよくあります。

脂質プロファイルの悪化

善玉(HDL)コレステロールを低下させ、悪玉(LDL)コレステロールを上昇させる傾向があります。長期間の使用は心血管系への負担となります。[2]

脱毛

DHT由来であるため、男性型脱毛(MPB)の遺伝的素因がある場合は、進行を早める可能性があります。[2]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、メチルエピチオスタノール(エピスタン)を含むエピチオスタノール誘導体はS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]

出典

  1. Konishi H, et al. A case of advanced breast cancer successfully treated with combined tamoxifen and epitiostanol. Gan No Rinsho. 1988;34(8):1025-1030. (PubMed / NLM / Overview)
  2. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  3. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
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