ドロスタノロン

基本情報

構造

ドロスタノロンの構造式
分子式
C20H32O2
分子量
304.47 g/mol [1]
主な構造修飾
2α-メチルDHT

性質

系統
DHT
投与経路
注射(プロピオン酸エステル、エナント酸エステル)
17αアルキル化
なし
AAR
62 : 25 [2]
半減期
プロピオン酸: 約2.5日 / エナント酸: 約10日 [2]
有効期間
プロピオン酸: 約2〜3日 / エナント酸: 約10〜14日
エストロゲン性
なし [2]
アロマターゼ活性
なし [2]
プロゲスチン性
なし

歴史

誕生

ドロスタノロン(Drostanolone)は、1959年にSyntex社によって開発されたDHT由来の注射用アナボリックステロイド(AAS)です。「マステロン(Masteron)」の商品名で知られています。[2]

医療

主に進行性の乳がんの治療(ホルモン療法)として承認され、1970年代から80年代にかけて広く用いられました。しかし、副作用がより少ない他の抗エストロゲン薬が登場したことにより、現在は医療用としてはほとんど使用されていません。[2][3]

ボディビル

コンテスト前の仕上げに欠かせない薬剤として、ボディビルの歴史の中で非常に重要な位置を占めています。筋肉を硬く、ドライに仕上げる効果に優れ、特に体脂肪率が低い状態でその真価を発揮します。[2]

特徴とリスク

特徴

ドロスタノロンは、DHTの2位にメチル基を追加した構造を持ちます。

  • 非芳香化と抗エストロゲン作用: DHT由来のためエストロゲンに変換されないだけでなく、アロマターゼの働きを阻害する「抗エストロゲン的」な性質を持つと考えられています。これにより、スタック内の他のステロイドによる水分貯留を抑える効果が期待できます。[2]
  • 筋肉の質(Hardness)の向上: 水分貯留を極限まで排除し、筋肉のディテールを際立たせる効果が非常に高いです。[2]
  • SHBGへの影響: SHBGを減少させ、血中の遊離テストステロン濃度を高める効果があります。[2]

リスク

強力なアンドロゲン副作用

DHTそのものに近い性質を持つため、ニキビ、体毛の増加、そして何より男性型脱毛(脱毛)の進行リスクが極めて高い薬剤です。[2]

血中脂質への悪影響

注射剤の中でも、HDLコレステロールの低下やLDLコレステロールの上昇を引き起こす傾向が比較的強いとされています。[2][4]

自己産生の抑制

他のAASと同様に、内因性テストステロンの産生を強力に抑制します。[2]

前立腺への影響

強力なアンドロゲン活性により、前立腺肥大のリスクを考慮する必要があります。[2][4]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、ドロスタノロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]

出典

  1. PubChem: Drostanolone (PubChem / NCBI / Overview)
  2. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  3. Petit JC, et al. Hormonal therapy of advanced breast cancer with drostanolone propionate. Bull Cancer. 1971;58(5):637-641. (PubMed / NLM / Overview)
  4. LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview)
  5. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
作成: