オキシメトロン

基本情報

構造

オキシメトロンの構造式
分子式
C21H32O3
分子量
332.48 g/mol [1]
主な構造修飾
17α-メチル、2-ヒドロキシメチレンDHT

性質

系統
DHT
投与経路
経口
17αアルキル化
あり [2]
AAR
320 : 45 [2]
半減期
約8.7時間 [2]
有効期間
約12〜16時間
エストロゲン性
高(アロマターゼによらない) [2][3]
アロマターゼ活性
なし [2]
プロゲスチン性
なし

歴史

誕生

オキシメトロン(Oxymetholone)は、1959年にSyntex社の研究者らによって開発された強力な経口アナボリックステロイド(AAS)です。「アナドロール(Anadrol)」や「アナポロン(Anapolon)」の商品名で広く知られています。[3][4]

医療

重度の貧血(赤血球産生の欠乏によるもの)の治療薬としてFDAに承認されました。赤血球産生を促すエリスロポエチンの産生を刺激する働きがあります。また、HIV/AIDSに関連する消耗症や、骨粗鬆症、筋消耗疾患の治療にも用いられてきました。[2][3][4]

ボディビル

1960年代から、その極めて強力な同化作用により、バルクアップ(筋量増加)を目的としたボディビル競技者らの間で多用されるようになりました。短期間で劇的な体重および筋力の増加をもたらす薬剤として、オフシーズンの定番とされています。[3]

特徴とリスク

特徴

オキシメトロンは、ジヒドロテストステロン(DHT)の2位にヒドロキシメチレン基、17位にメチル基を追加した誘導体です。

  • 強力なタンパク同化作用: 経口ステロイドの中でも最高クラスの同化活性を持ち、窒素保持を劇的に向上させます。[2][3]
  • 独特のエストロゲン作用: 化学構造上、アロマターゼによってエストロゲンに変換されることはありません。しかし、オキシメトロン自体またはその代謝物がエストロゲン受容体を直接刺激する性質を持つと考えられており、強い水分貯留や女性化乳房を引き起こすリスクがあります。[2][3]
  • 経口活性: 17αアルキル化(17aa)されているため、経口摂取しても肝臓での分解を免れ、血中に到達します。[2][3]

リスク

肝毒性

17aa製剤の中でも肝臓への負担が特に重い部類に入ります。長期または高用量の使用は、肝機能数値の悪化や、重篤な場合には肝腫瘍、肝紫斑病(peliosis hepatis)を引き起こす可能性があります。[2][3][5]

血中脂質と心血管系への影響

HDL(善玉)コレステロールを減少させ、LDL(悪玉)コレステロールを増加させる作用が非常に強く、心血管疾患のリスクを高めます。また、強い水分貯留に伴う血圧上昇も顕著です。[2][3][4]

アンドロゲン副作用

DHT由来ですが、高用量ではニキビ、多毛、男性型脱毛などのアンドロゲン性副作用が現れることがあります。また、強力な自己産生抑制(HPTA抑制)を引き起こします。[2][3]

糖代謝への影響

インスリン感受性の低下や、耐糖能異常を引き起こす可能性が示唆されています。[3]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、オキシメトロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[6]

出典

  1. PubChem: Oxymetholone (PubChem / NCBI / Overview)
  2. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  3. Pavlatos AM, et al. Review of oxymetholone: a 17alpha-alkylated anabolic-androgenic steroid. Clin Ther. 2001;23(6):789-801. (PubMed / NLM / Overview)
  4. DailyMed archive: ANADROL-50 - oxymetholone tablet (DailyMed / NLM / Overview)
  5. LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview)
  6. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
作成: