基本情報
構造
- 分子式
- C20H30O2
- 分子量
- 302.45 g/mol [1]
- 主な構造修飾
- 1-メチル、C1-2二重結合DHT
性質
歴史
誕生
メテノロン(Methenolone)は、1960年代初頭にスクイブ社(現在のブリストル・マイヤーズ スクイブ社)によって開発されました。当初は酢酸エステルとして登場し、その後、シエーリング社(現在のバイエル社)によってエナント酸エステル(プリモボラン・デポ)が広く展開されました。[2]
医療
手術後や重篤な疾患に伴うタンパク異化(筋消耗)の抑制、骨粗鬆症、および再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などの治療を目的として開発されました。特に肝臓への毒性が極めて低く、アンドロゲン副作用も穏やかであるため、子供や女性、高齢者の治療にも適していると見なされてきました。[2][1]
ボディビル
アーノルド・シュワルツェネッガーをはじめとする、1970年代のボディビルダーたちが愛用していたことで知られています。筋量を大幅に増やすパワーはありませんが、減量期に筋肉を保護し、質感を向上させるための「安全性の高い」薬剤として現在も根強い人気があります。[2]
特徴とリスク
特徴
メテノロンは、DHTの1位と2位の間に二重結合を導入し、さらに1位にメチル基を追加した構造を持ちます。
- 非17aaの経口活性: 多くの経口ステロイドが肝毒性のある17αアルキル化(17aa)を採用しているのに対し、メテノロン酢酸エステルは1位のメチル化によって経口活性を持たせています。これにより、肝臓への負担が劇的に軽減されています。[2]
- エストロゲン変換なし: DHT由来であり、アロマターゼによる変換を全く受けません。水分貯留や女性化乳房、血圧上昇の心配がなく、クリーンな筋肥大を可能にします。[2]
- アンドロゲン副作用の低さ: テストステロンと比較してアンドロゲン活性が低く、ニキビや脱毛、男性化症状のリスクが相対的に低くなっています。[2]
リスク
自己産生の抑制
他の強力なステロイドに比べれば抑制は緩やかであるとされることが多いですが、高用量や長期の使用では、当然ながらLHやFSHの産生を抑制し、内因性テストステロンの低下を招きます。[2]
血中脂質への影響
肝毒性は極めて低いものの、経口剤の服用はHDLコレステロールの低下を招くことが報告されています。注射剤(エナント酸エステル)の方が脂質プロファイルへの悪影響はさらに小さい傾向にあります。[2][1]
緩やかな効果
同化活性がテストステロンよりも低いため、短期間で劇的な変化を求めるユーザーにとっては、効果が物足りないと感じられることがあります。
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、メテノロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[3]
出典
- PubChem: Methenolone (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩