基本情報
構造
- 分子式
- C20H32O2
- 分子量
- 304.47 g/mol [1]
- 主な構造修飾
- 1α-メチルDHT
性質
歴史
誕生
メステロロン(Mesterolone)は、1960年代にシエーリング社(現在のバイエル社)によって開発されたDHT由来の経口アンドロゲン製剤です。「プロビロン(Proviron)」の商品名で世界的に広く流通しています。[2]
医療
主に男性の性腺機能低下症、精子形成不全(不妊症)、および更年期障害の治療に用いられます。他の経口ステロイドと異なり、肝毒性が極めて低く、かつ内因性テストステロンの産生をほとんど抑制しないというユニークな特性を持つため、長期的な投与が可能なアンドロゲンとして重宝されてきました。[2][3]
ボディビル
筋量を増やすための強力な同化剤としてではなく、スタック全体の効率を高める「補助剤」として多用されます。特にコンテスト前の減量期において、筋肉のドライな質感を作り出し、性欲や活力を維持するために利用されます。[2]
特徴とリスク
特徴
メステロロンは、DHTの1位にメチル基を追加した構造を持ちます。
- 非17aaの経口活性: 多くの経口ステロイドに見られる肝毒性のある17αアルキル化を施さず、1位のメチル化によって経口での有効性を確保しています。これにより、肝臓への負担を最小限に抑えています。[2]
- 強力なSHBG結合能: 性ホルモン結合グロブリン(SHBG)に対して非常に高い親和性を持ちます。SHBGに優先的に結合することで、血中の他のステロイド(特にテストステロン)がSHBGに捕まるのを防ぎ、結果として「遊離」ホルモンの割合を高めます。[2]
- 抗エストロゲン作用: アロマターゼの活性を阻害する性質があると考えられており、水分貯留や女性化乳房を軽減する助けとなります。[2]
- HPTA抑制の低さ: 推奨される用量範囲内であれば、内因性のテストステロン産生(LHやFSHの分泌)をほとんど妨げないという、AASの中でも極めて稀な性質を持ちます。[2]
リスク
同化作用の弱さ
骨格筋組織において、3α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(3α-HSD)によって速やかに不活性化されるため、筋肥大そのものに対する効果は極めて限定的です。[2]
アンドロゲン副作用
純粋なアンドロゲンとしての性質が強いため、ニキビ、男性型脱毛の進行、前立腺への影響などの副作用は発生し得ます。[2][4]
精神的な影響
高用量の摂取は、イライラや攻撃性の増加を招く可能性があります。[3]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、メステロロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]
出典
- PubChem: Mesterolone (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- Jockenhövel F, et al. Influence of various modes of androgen substitution on serum lipids and lipoproteins in hypogonadal men. Metabolism. 1999;48(5):590-596. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩
作成: