スタノゾロール

基本情報

構造

スタノゾロールの構造式
分子式
C21H32N2O
分子量
328.49 g/mol [1]
主な構造修飾
17α-メチル、ピラゾール環結合DHT

性質

系統
DHT
投与経路
経口、注射(水溶性サスペンション)
17αアルキル化
あり [2]
AAR
320 : 30 [2]
半減期
経口: 約9時間 / 注射: 約24時間 [2]
有効期間
経口: 約8〜12時間 / 注射: 約1〜2日
エストロゲン性
なし [2]
アロマターゼ活性
なし [2]
プロゲスチン性
なし

歴史

誕生

スタノゾロール(Stanozolol)は、1959年にウィンthrop・ラボラトリーズ社によって開発されたDHT由来のアナボリックステロイド(AAS)です。「ウィンストロール(Winstrol)」の商品名で広く知られています。[2]

医療

遺伝性血管浮腫(HAE)の症状軽減や頻度減少、また手術後や慢性疾患に伴う筋消耗、貧血の治療を目的としてFDAに承認されました。現在でも、特定の血管浮腫の治療において有用な薬剤として位置付けられています。[2][1]

ボディビル・スポーツ

1988年ソウルオリンピックでのベン・ジョンソンの事件により、一般社会でもその名が広く知られるようになりました。ボディビル競技では、コンテスト前の減量期に筋肉を「ドライ」で「ハード」な質感に仕上げるための必須の薬剤とされています。[2]

特徴とリスク

特徴

スタノゾロールは、DHTのA環にピラゾール環を結合させ、17位にメチル基を追加した特異な構造を持ちます。

  • 強力なSHBG低減: 性ホルモン結合グロブリン(SHBG)を大幅に減少させる能力に長けています。これにより、血中の他のステロイドの「遊離(フリー)」濃度が高まり、サイクル全体の効率を向上させます。[2][3]
  • 水分貯留なし: エストロゲンへの変換が一切ないため、皮下水分を抑え、血管の浮き出た「ドライ」なコンディションを作ります。[2]
  • 注射剤の特異性: 注射剤(デポ)は水溶性サスペンションであり、油性剤よりも速やかに作用しますが、注射部位の痛み(PIP)が強いことでも知られています。[2]

リスク

肝毒性

経口・注射のいずれの形態であっても17αアルキル化(17aa)されており、肝臓への負担があります。特に経口剤は肝数値の悪化を招きやすいため、短期間の使用が推奨されます。[2][1][4]

関節への影響 (Dry Joints)

「関節が乾燥する」と表現されるような、独特の関節痛を訴えるユーザーが多く存在します。これはスタノゾロールの強力な抗エストロゲン的性質や水分排出能力に関連していると考えられており、高重量トレーニング時の怪我のリスクを高める可能性があります。[2]

血中脂質への深刻な悪影響

極めて低用量の使用であっても、HDL(善玉)コレステロールを激減させ、LDL(悪玉)コレステロールを急騰させる性質があります。心血管系へのストレスは他のステロイドと比較しても強い部類に入ります。[2][3]

アンドロゲン副作用

DHT由来の中でも、特に頭髪への攻撃性(脱毛リスク)が高い薬剤として警戒されています。[2]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、スタノゾロールはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]

出典

  1. PubChem: Stanozolol (PubChem / NCBI / Overview)
  2. Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview)
  3. Kluft C, et al. Protein C, an anticoagulant protein, is increased in healthy volunteers and surgical patients after treatment with stanozolol. Thromb Res. 1984;33(2):129-138. (PubMed / NLM / Overview)
  4. LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview)
  5. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
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