テストステロンジェル

基本情報

構造

テストステロンの構造式
分子式
C19H28O2
分子量
288.4 g/mol
主な構造修飾
なし

性質

系統
テストステロン
投与経路
外用(経皮ジェル)
17αアルキル化
なし
エストロゲン性
アロマターゼ活性
プロゲスチン性

歴史

誕生

テストステロンは1930年代に単離・合成され、その後のアンドロゲン補充療法とAAS開発の基準化合物になりました。[1]
AndroGel(アンドロゲル)は、テストステロンを皮膚から吸収させる外用ジェル製剤として開発されました。
AndroGel 1%は2000年に米国で承認され、AndroGel 1.62%は後続の経皮テストステロン製剤です。[2][3]

医療

AndroGel 1.62%は、内因性テストステロンの欠乏または欠如に関連する成人男性の性腺機能低下症に対する補充療法として収載されています。[2]
原発性性腺機能低下症と低ゴナドトロピン性性腺機能低下症が適応の中心です。[2]
加齢性性腺機能低下症に対する安全性と有効性は確立していないとされています。[2]

テストステロン療法では、症状と血中テストステロン低値の組み合わせで診断し、治療中はテストステロン値、ヘマトクリット、前立腺関連評価、心血管リスクなどを確認します。[4]

ボディビル

AndroGelは新しい別種のAASではなく、テストステロンを経皮的に全身へ届ける製剤です。
注射用エステル製剤のようにエステル鎖で放出時間を変える薬剤ではなく、皮膚からの吸収、塗布部位、製剤濃度によって血中濃度の作られ方が変わります。[2]

製品名

  • アンドロゲル(AndroGel)
  • アンドロゲル1.62%(AndroGel 1.62%)

特徴とリスク

特徴

テストステロンジェルは、皮膚から吸収されたテストステロンを全身循環へ送達する経皮製剤です。[2]
AndroGel 1.62%は、塗布後24時間にわたりテストステロンを経皮送達します。[2]

有効成分はテストステロンそのものなので、アンドロゲン受容体への作用に加えて、エストラジオールへのアロマターゼ変換と5αリダクターゼによるDHT変換が生じます。[1]
経皮製剤では、テストステロンエステルの加水分解ではなく、皮膚からの吸収が製剤上の特徴になります。[2]

リスク

心疾患

ヘマトクリット上昇、血栓塞栓症、血圧上昇、脂質変化が添付文書に記載されています。[2]
AndroGel 1.62%の血圧評価では、16週後に平均収縮期/拡張期血圧がベースラインから1.9/1.3 mmHg上昇し、高血圧治療中の患者では3.0/2.2 mmHg上昇したと記載されています。[2]

エストロゲン性

テストステロンはアロマターゼによってエストラジオールへ変換されます。[1]
アンドロゲン治療中の女性化乳房が記載されています。[2]

アンドロゲン性

テストステロンは5αリダクターゼによってDHTへ変換されます。[1]
良性前立腺肥大症の悪化や前立腺がん評価は、アンドロゲン治療中の監視項目に含まれます。[2]

肝臓

AndroGel 1.62%は17αアルキル化経口アンドロゲンではありません。
添付文書では、17αアルキル化アンドロゲンに関連する胆汁うっ滞性肝炎、肝腫瘍、peliosis hepatisなどについて説明したうえで、AndroGel 1.62%はこれらを起こすことは知られていないと記載されています。[2]

その他

皮膚に残ったテストステロンゲルは、接触者へ移行することがあります。[2]
添付文書では、塗布後に乾燥させること、衣類で覆うこと、接触前に塗布部位を洗うことが指示されています。[2]
外因性アンドロゲンにより、下垂体FSHへのフィードバック抑制を介して精子形成が抑制される可能性があります。[2]
浮腫、睡眠時無呼吸の増悪、皮膚反応、PSA上昇も記載されています。[2]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、テストステロンはS1のアナボリック薬に該当します。
S1は、競技会時・競技会外ともに禁止されるカテゴリです。[5]

出典

  1. Endotext: Androgen Physiology, Pharmacology, Use and Misuse (Endotext / NCBI Bookshelf / Overview)
  2. DailyMed: ANDROGEL - testosterone gel 1.62% prescribing information (DailyMed / NLM / Overview)
  3. AAFP: FDA Approval of AndroGel (aafp.org / Overview)
  4. Bhasin S, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2018;103(5):1715-1744. (DOI / Overview)
  5. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
更新: / 作成: