基本情報
構造
- 分子式
- C30H44O3
- 分子量
- 452.67 g/mol [1]
- エステル
- ウンデシレン酸
- 主な構造修飾
- C1-2二重結合テストステロンの17β位エステル化
性質
歴史
誕生
ボルデノン(Boldenone)は、1949年にチバ社によって特許が取得されたテストステロン誘導体です。当初は人間用の医療用医薬品として開発されましたが、1970年代以降は主にウンデシレン酸エステルとして、獣医学の分野(特に馬用)で「エキポイズ(Equipoise)」の商品名で広く普及しました。[2]
医療・獣医学
かつては、人間用の医療においても筋消耗や骨粗鬆症の治療に用いられた時期がありましたが、現在はほとんどの国で人間用としては販売されていません。馬の除脂肪体重や体調を改善するための主要な薬剤として位置付けられています。[2][3]
ボディビル
ダイアナボルの注射版と形容されることもありますが、実際にはダイアナボルよりも作用が緩やかで持続的です。血管が浮き出るような質感(バスキュラリティ)の向上と、適度な筋量増加を目的として、長期のサイクルで好んで使用されます。[2]
特徴とリスク
特徴
ボルデノンは、テストステロンの1位と2位の間に二重結合を導入した構造を持ちます。
- 安定した筋肥大: 爆発的な増加はありませんが、水分貯留が少なく、質の高い筋肉をゆっくりと着実に増やす効果があります。[2]
- 食欲の増進: 多くのユーザーにおいて、顕著な食欲増進作用が報告されています。これは、オフシーズンの大量摂取を支える助けとなります。[2]
- 赤血球産生の強力な刺激: 赤血球の数を増やす能力が非常に高く、筋持久力やポンプ感を劇的に高めます。一方で、血液の粘度が高まるリスクも伴います。[2][3]
- 低い芳香化率: エストロゲンへの変換率はテストステロンの約半分程度であり、水分貯留や女性化乳房のリスクは比較的低いとされています。[2]
リスク
血液の粘性上昇
赤血球産生を強力に促すため、ヘマトクリット値が過度に上昇し、血栓症や高血圧のリスクを高める可能性があります。定期的な血液検査によるモニタリングが推奨されます。[2][3][4]
自己産生の抑制
他のAASと同様、内因性テストステロンの産生を強力に抑制します。特にエステルが長いため、サイクル後の回復には時間を要します。[2]
アンドロゲン副作用
テストステロンよりは弱いものの、ニキビや男性型脱毛などの副作用が発生する可能性は十分にあります。[2]
長い残留期間
脂溶性が高く、ウンデシレン酸エステルの放出が非常に遅いため、競技会でのドーピング検査においては、使用中止から数ヶ月以上経過しても検出されるリスクがあります。[2][3]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、ボルデノンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[6]
出典
- PubChem: Boldenone undecylenate (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- Schanzer W. Metabolism of anabolic androgenic steroids. Clinical Chemistry. 1996;42(7):1001-1020. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩