基本情報
構造
- 分子式
- C20H30O2
- 分子量
- 302.45 g/mol [1]
- 主な構造修飾
- 17α-メチル化
性質
歴史
誕生
メチルテストステロン(Methyltestosterone)は、1935年に世界で初めて合成された経口用アンドロゲン製剤の一つです。テストステロンの構造を修飾して経口での吸収を可能にした、アナボリックステロイドの歴史における先駆的な薬剤です。[2]
医療
男性の性腺機能低下症、思春期遅滞、および閉経後女性の進行性乳がんの治療を目的として長年使用されてきました。現在は、より肝毒性が低く、副作用の少ない代替薬が多数存在するため、先進国の医療現場で使用される機会は減少しています。[2][3]
ボディビル
極めて古典的なステロイドであり、現代ではより洗練された薬剤(ダイアナボルやアナドロール等)に取って代わられています。しかし、その強力なアンドロゲン作用による攻撃性や集中力の向上を目的として、パワーリフターやコンバットスポーツの競技者がごく短期間、試合前に使用することがあります。[2]
特徴とリスク
特徴
メチルテストステロンは、テストステロンの17位にメチル基を追加した単純な構造を持ちます。
- 経口活性: 17αアルキル化により肝臓での分解を免れ、経口摂取で血流に到達します。[2]
- 強力なアンドロゲン作用: アンドロゲン受容体への直接的な作用に加え、組織内で強力な代謝物(17α-メチルDHT)へ変換されるため、精神的な高揚感や攻撃性を強く引き出します。[2]
- 高い芳香化率: エストロゲンへの変換が非常に容易であり、かつ変換された代謝物(17α-メチルエストラジオール)は通常のエストラジオールよりも強力に作用します。[2]
リスク
顕著な肝毒性
17αアルキル化(17aa)ステロイドの中でも、肝臓への負担が比較的重い部類に入ります。長期間の使用は肝機能指数の悪化や胆汁うっ滞を引き起こすリスクが高いです。[2][4]
激しい女性化作用
高いエストロゲン変換率により、水分貯留、女性化乳房、血圧の上昇が急速に現れます。これらを防ぐためには、強力なAI(アロマターゼ阻害薬)の併用がほぼ必須となります。[2]
アンドロゲン副作用の頻出
皮脂の過剰分泌、激しいニキビ、急速な脱毛などのアンドロゲン関連副作用が、他のマイルドなステロイドに比べて顕著に現れます。[2]
精神的な不安定さ
「ロイドレイジ(Roid Rage)」と呼ばれるような、制御不能な怒りや気分の変動を引き起こしやすい薬剤とされています。[2]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、メチルテストステロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[5]
出典
- PubChem: Methyltestosterone (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- DailyMed: METHYLTESTOSTERONE capsule (FDA Label) (DailyMed / NLM / Overview) ↩
- LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩