基本情報
構造
- 分子式
- C27H40O3
- 分子量
- 412.6 g/mol [1]
- エステル
- シピオン酸
- 主な構造修飾
- 17β水酸基のエステル化
性質
歴史
誕生
テストステロンシピオン酸エステル(Testosterone Cypionate)は、1950年代に米国で開発された長時間作用型のテストステロンエステルです。「デポ・テストステロン(Depo-Testosterone)」の商品名で知られ、特に北米市場において最も普及しているテストステロン製剤の一つです。[2][3]
医療
男性性腺機能低下症(低テストステロン症)の補充療法(TRT)を主目的としてFDAに承認されました。エナント酸エステルと薬物動態が非常に似ており、医療現場ではほぼ同等の薬剤として扱われますが、米国ではシピオン酸エステルの方が一般的です。[2][3]
ボディビル
エナント酸エステルと並び、あらゆるサイクルの「ベース(基礎)」となるテストステロンとして、世界中のボディビルダーに愛用されています。長い半減期により、週1回から2回の注射で安定した血中濃度を維持できるため、増量期・減量期を問わず広く利用されます。[4]
特徴とリスク
特徴
テストステロンシピオン酸エステルは、テストステロンの17β水酸基にシピオン酸(シクロペンチルプロピオン酸)を結合させたものです。
- 長時間作用: 油性溶剤からゆっくりと放出され、血中テストステロン濃度を長期間にわたって上昇させます。エナント酸エステル(炭素7個)よりもわずかに長い側鎖(炭素8個)を持ちますが、臨床的な差はほとんどありません。[2][3]
- テストステロンとしての同化・アンドロゲン作用: 放出後の活性本体は純粋なテストステロンであり、タンパク同化、赤血球産生刺激、筋力向上などの効果を発揮します。[2][4]
リスク
エストロゲン副作用
アロマターゼによってエストラジオールに変換されます。高用量では水分貯留、女性化乳房、血圧上昇のリスクがあり、アロマターゼ阻害薬(AI)による管理が必要になる場合があります。[2][4]
アンドロゲン副作用
ニキビ、男性型脱毛、多毛、前立腺への影響など、テストステロン特有の副作用が発生します。これらは組織内でDHTへ変換される経路に依存します。[2][4]
自己産生の抑制
外因性の投与により、HPTA(視床下部・下垂体・精巣軸)が抑制され、内因性テストステロンの分泌低下や精巣萎縮が生じます。[2][4]
心血管系への影響
高用量の投与は血圧の上昇や赤血球増加症(多血症)のリスクを高める可能性があります。[4][5]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、テストステロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[6]
出典
- PubChem: Testosterone cypionate (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- DailyMed: DEPO-TESTOSTERONE - testosterone cypionate injection, solution (FDA Label) (DailyMed / NLM / Overview) ↩
- Bhasin S, et al. Testosterone dose-response relationships in healthy young men. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2001;281(6):E1172-E1181. (PubMed / NLM / Overview) ↩
- LiverTox: Androgenic Steroids (NCBI Bookshelf / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩