基本情報
構造
- 分子式
- C22H32O3
- 分子量
- 344.49 g/mol [1]
- エステル
- プロピオン酸
- 主な構造修飾
- 17β水酸基のエステル化
性質
歴史
誕生
テストステロンプロピオン酸エステル(Testosterone Propionate)は、1930年代半ばに開発された、世界で最も初期の市販テストステロン製剤の一つです。長時間作用型のエナント酸エステルやシピオン酸エステルが登場する以前は、医療用テストステロンの主流でした。[2]
医療
男性の更年期障害や不妊症などの治療に用いられてきましたが、現在はより注射頻度の少なくて済む長時間作用型のエステルにその座を譲っています。しかし、血中濃度の急速なコントロールが必要な特殊な症例では今も利用されることがあります。[2][1]
ボディビル
短時間作用型という特性から、特に減量期(カッティングサイクル)や、サイクル終盤の「調整」目的で多用されます。また、使用を中止してから血中濃度が下がるのが早いため、ドーピング検査を控えた競技者にとっても歴史的に重要な位置を占めてきました。[2]
特徴とリスク
特徴
テストステロンプロピオン酸エステルは、テストステロンの17β水酸基にプロピオン酸(炭素3個の短い側鎖)を結合させたものです。
- 速効性と短時間作用: 注射後、速やかに血中濃度がピークに達し、その後数日で急速に減少します。安定した血中濃度を維持するためには、1日おき(EOD)や毎日などの頻繁な注射が必要です。[2][1]
- 水分貯留の少なさ(体感): 他の長時間作用型エステルと比較して、水分貯留が少なく感じられると報告されることが多いです。これは、血中濃度の急激な変化が関係していると考えられます。[2]
リスク
注射部位の痛み(PIP)
プロピオン酸エステルの最大の欠点の一つは、注射部位の痛みや炎症(Post Injection Pain)が生じやすいことです。側鎖が短く結晶化しやすいため、組織への刺激が強くなる傾向があります。[2]
頻繁な注射の負担
安定した血中濃度を得るためには週に何度も注射を繰り返す必要があり、組織への物理的な負担や感染リスクが高まります。[2][1]
エストロゲンおよびアンドロゲン副作用
放出後の本体はテストステロンであるため、高用量では女性化乳房、水分貯留、脱毛、ニキビといった典型的なテストステロンの副作用が同様に発生します。[2][1]
心血管系への影響
急激な血中濃度の変動は、心血管系へのストレスや赤血球増加症のリスクを高める可能性があります。[3]
競技規制上の扱い
WADA禁止表では、テストステロンはS1のアナボリック薬に該当し、競技会時・競技会外ともに禁止されています。[6]
出典
- PubChem: Testosterone propionate (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩