アンドロゲン・アナボリック比は、AASのアンドロゲン作用とアナボリック作用を相対比較するために使われてきた薬理学的指標です。[1][2]
この比率は主に動物試験から得られた値であり、ヒトでの筋肥大効果、副作用、用量反応をそのまま予測するものではありません。[1][2]
測定の基本
古典的な評価では、去勢雄ラットに被験物質を投与し、アンドロゲン感受性組織と同化作用を反映する組織の重量変化を比較します。[1][2]
代表的には以下のような組織が用いられます。
| 評価軸 | 用いられる組織例 |
|---|---|
| アンドロゲン作用 | 前立腺、精嚢、球海綿体筋など |
| アナボリック作用 | 肛門挙筋など |
前立腺や精嚢への作用が小さく、肛門挙筋などへの作用が大きい化合物は、アナボリック寄りの比率として示されます。[1][2]
比率の限界
アンドロゲン・アナボリック比には、以下の限界があります。[1][2]
- 動物種、投与経路、投与期間、測定組織に依存する。
- 組織重量の変化をもとにした指標であり、ヒトの体感、筋肥大、筋力、副作用を直接表すものではない。
- 代謝、芳香化、5α還元、17αアルキル化、エステル化、血中分画、肝初回通過、組織内酵素活性を含まない。
- 同じ比率でも、心血管系、肝胆道系、脂質、HPTA抑制、皮膚・毛包への影響は別に評価される。
AASの評価軸
AASの性質は、アンドロゲン・アナボリック比だけでは整理できません。少なくとも以下の軸が別に存在します。
| 評価軸 | 内容 |
|---|---|
| AR作用 | アンドロゲン受容体への作用、組織ごとの反応 |
| 芳香化 | エストラジオールなどへの変換の有無 |
| 5α還元 | DHTまたはDHNなどへの変換 |
| 17αアルキル化 | 経口活性と肝胆道系負荷 |
| エステル化 | 注射後の放出速度と作用時間 |
| 血中分画 | SHBG、アルブミン、遊離分画との関係 |
| 組織内代謝 | 5αリダクターゼ、3α-HSD、アロマターゼなどの発現 |
出典
- Kicman AT. Pharmacology of anabolic steroids (British Journal of Pharmacology / 2008 / Overview) ↩
- Kuhn CM. Anabolic steroids. Recent Progress in Hormone Research. 2002;57:411-434. (DOI / Overview) ↩
更新: / 作成: