オスタリン(MK-2866)

基本情報

構造

オスタリンの構造式
分子式
C19H14F3N3O3
分子量
389.3 g/mol
主な構造修飾
アリールプロピオンアミド型の非ステロイド性骨格

性質

系統
非ステロイド性SARM(GTx-024、MK-2866、S-22)[1][2]
投与経路
経口
17αアルキル化
なし(非ステロイド性)
エストロゲン性
アロマターゼ活性
なし
プロゲスチン性

歴史

誕生

オスタリン(Ostarine)は、エノボサーム(Enobosarm)、GTx-024、MK-2866、S-22の名でも記録される非ステロイド性SARMです。[1][2]
GTx-024は、筋肉と骨の同化作用を狙い、毛髪や前立腺など他のアンドロゲン応答組織への作用を抑える経口SARMとして臨床開発されました。[3]

医療

2011年に公表された健康な高齢男性と閉経後女性を対象にした第II相試験では、86日目までにDXAで測定した総除脂肪体重と階段昇降パワーが評価されました。[3]
同試験では、最高用量群でプラセボ比1.3kgの除脂肪体重増加と、階段昇降パワーの改善が報告されています。[3]

2013年に公表されたがん患者の筋消耗を対象にした第II相試験では、113日目または試験終了時までの評価で、エノボサーム群の総除脂肪体重がベースラインから増加しました。[4]
非小細胞肺がん患者の筋消耗を対象にしたPOWER1/POWER2の第III相試験プログラムも設計されました。[5]
SARM全体としては、筋量増加が示されても臨床症状や身体機能の改善が十分でなかったため、ヒト用のFDA承認には至っていません。[2]

ボディビル

医療開発では筋消耗が主要な対象でしたが、体格強化目的では「経口」「非ステロイド性」「組織選択性」という性質から、AASとは別系統の物質として名前が広がりました。[2][3]
オンラインや栄養関連店舗で流通するブラックマーケットSARMでは、ラベル表示が信頼できない製品があると報告されています。[2][6]

特徴とリスク

特徴

オスタリンはステロイド骨格を持たない経口SARMで、筋肉と骨のアンドロゲン受容体を標的にした組織選択的な同化作用を狙って開発されました。[3]
健康な高齢男性と閉経後女性の第II相試験では、除脂肪体重の増加、階段昇降パワーの改善、インスリン抵抗性の改善が報告されています。[3]

がん患者の筋消耗を対象にした第II相試験でも、エノボサーム群で総除脂肪体重の増加が報告されています。[4]
ただし、SARM全体では臨床エンドポイントの改善が限定的で、承認薬としての位置づけにはつながっていません。[2]

リスク

HDL、LDL

2011年の第II相試験では、総コレステロール、HDL、トリグリセリドが低下し、LDLに有意差はありませんでした。[3]
HDL低下は用量依存的に示され、脂質プロファイルへの影響が確認されています。[3]

LH、FSH、テストステロン

同試験では、男性のSHBGと総テストステロンが低下しました。[3]
遊離テストステロン、DHT、エストラジオール、FSH、LHは、男性でプラセボとの差が有意ではありませんでした。[3]

肝機能

同試験では一過性のALT上昇が8例で観察され、1例はALT上昇により中止されました。[3]
SARMの臨床試験ではALT上昇が報告され、ボディビル目的の自己使用では黄疸を伴う肝障害の症例も報告されています。[2]

その他

未承認SARM製品に関連する有害事象として、心筋梗塞・脳卒中リスク、睡眠障害、性機能障害、肝障害などが安全情報で挙げられています。[6]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、オスタリンはエノボサーム(ostarine)としてS1.2のその他のアナボリック薬に記載されています。
S1は、競技会時・競技会外ともに禁止されるカテゴリです。[7]

出典

  1. PubChem: Enobosarm (PubChem / NCBI / Overview)
  2. NCBI Bookshelf: Selective Androgen Receptor Modulators (NCBI Bookshelf / Overview)
  3. Dalton JT, et al. The selective androgen receptor modulator GTx-024 (enobosarm) improves lean body mass and physical function in healthy elderly men and postmenopausal women. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle. 2011;2:153-161. (link.springer.com / Overview)
  4. Dobs AS, et al. Effects of enobosarm on muscle wasting and physical function in patients with cancer: a double-blind, randomised controlled phase 2 trial. Lancet Oncology. 2013;14(4):335-345. (PubMed / NLM / Overview)
  5. Crawford J, et al. Study Design and Rationale for the Phase 3 Clinical Development Program of Enobosarm, a Selective Androgen Receptor Modulator, for the Prevention and Treatment of Muscle Wasting in Cancer Patients (POWER Trials). Current Oncology Reports. 2016;18:37. (PubMed Central / Overview)
  6. FDA. FDA warns against use of SARMs among teens, young adults. (fda.gov / 2023 / Overview)
  7. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
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