テストロン(RAD-140)

基本情報

構造

テストロンの構造式
分子式
C20H16ClN5O2
分子量
393.8 g/mol
主な構造修飾
ベンゾニトリル基、1,3,4-オキサジアゾール骨格

性質

系統
非ステロイド性SARM(RAD140、EP0062、vosilasarm)[1]
投与経路
経口 [2]
17αアルキル化
なし(非ステロイド性)
半減期
約44.7時間 [2]
エストロゲン性
アロマターゼ活性
なし
プロゲスチン性

歴史

誕生

テストロン(Testolone)は、RAD140、RAD-140、ボシラサーム(Vosilasarm)、EP0062の名でも記録される非ステロイド性SARMです。[1]
2010年にRadius Health所属著者を含む研究班が、RAD140の発見と前臨床での同化アンドロゲン作用を報告しました。[3]

医療

2022年に公表されたfirst-in-human第1相試験では、ER陽性/HER2陰性の転移性乳がんを対象に、RAD140の安全性、忍容性、薬物動態、抗腫瘍活性が評価されました。[2]
同試験では、SHBG低下、PSA上昇、腫瘍生検でのアンドロゲン受容体エンゲージメント、1例の部分奏効が報告されています。[2]

SARMは筋肉減少、骨粗しょう症、がん悪液質などを対象に開発・評価されてきましたが、米国FDAでヒト用に承認されたSARMはありません。[4]

ボディビル

RAD140は、経口、非ステロイド性、アンドロゲン受容体選択性という性質から、AASとは別系統のSARMとして流通しました。[3][4]
オンラインや栄養関連店舗で流通するブラックマーケットSARMでは、表示成分や含有量の信頼性が問題になります。[4][5]

製品名

  • テストロン(Testolone)
  • RAD140 / RAD-140
  • ボシラサーム(Vosilasarm)
  • EP0062

特徴とリスク

特徴

RAD140は、アンドロゲン受容体に作用する経口の非ステロイド性SARMとして報告されています。[2][3]
前臨床モデルでは筋組織での活性と前立腺組織での相対的に弱い活性が示され、組織選択性を狙った化合物として開発されました。[3]

ER陽性/HER2陰性乳がんの第1相試験では、SHBG低下とPSA上昇がアンドロゲン受容体エンゲージメントの代理指標として用いられ、投与中の腫瘍生検でも受容体エンゲージメントが示されています。[2]
RAD140はアロマターゼによるエストロゲン変換や、5αリダクターゼによるより強いアンドロゲンへの変換を受けないと報告されています。[2]

リスク

肝機能

ER陽性/HER2陰性乳がんの第1相試験では、AST上昇、ALT上昇、総ビリルビン上昇が主な治療関連有害事象として報告されています。[2]
ボディビル目的のRAD-140使用後に重度肝障害を生じた症例報告もあります。[6]
SARM全体でも、胆汁うっ滞性黄疸を含む肝障害例が報告されています。[4]

その他

同第1相試験では、嘔吐、脱水、食欲低下、体重低下も比較的多い有害事象として報告されています。[2]
未承認SARM製品に関連する有害事象として、心筋梗塞・脳卒中リスク、睡眠障害、性機能障害、肝障害などが安全情報で挙げられています。[5]

競技規制上の扱い

WADA禁止表では、RAD140はS1.2のその他のアナボリック薬、SARMsに該当します。
S1は、競技会時・競技会外ともに禁止されるカテゴリです。[7]

出典

  1. PubChem: Vosilasarm (PubChem / NCBI / Overview)
  2. LoRusso P, et al. A First-in-Human Phase 1 Study of a Novel Selective Androgen Receptor Modulator (SARM), RAD140, in ER+/HER2- Metastatic Breast Cancer. Clinical Breast Cancer. 2022;22(1):67-77. (DOI / Overview)
  3. Miller CP, et al. Design, Synthesis, and Preclinical Characterization of the Selective Androgen Receptor Modulator (SARM) RAD140. ACS Medicinal Chemistry Letters. 2011;2(2):124-129. (PubMed / NLM / Overview)
  4. NCBI Bookshelf: Selective Androgen Receptor Modulators (NCBI Bookshelf / Overview)
  5. FDA. FDA warns against use of SARMs among teens, young adults. (fda.gov / 2023 / Overview)
  6. Perananthan V, George J. Severe liver injury following use of RAD-140, a selective androgen receptor modulator, for body building. Australian Prescriber. 2024;47(1):26-28. (PubMed Central / Overview)
  7. World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview)
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