力学的刺激は、筋線維が力を発揮する、または伸張されることで生じる物理的入力です。筋肥大で重要なのは、外部重量そのものではなく、対象となる筋線維が実際に受ける張力、伸張、変形です。
骨格筋線維は収縮装置であるサルコメアを持ちます。収縮中にアクチンとミオシンの相互作用が起こると、筋線維内に能動的な張力が生じます。筋線維が長い筋長で負荷を受ける場合には、タイチン、細胞骨格、細胞外基質などを介した受動的張力も関与します。
能動的張力
能動的張力は、筋線維が収縮して力を発揮するときに生じる張力です。レジスタンス運動では、動員された筋線維が収縮し、サルコメア内部で張力が発生します。
肥大刺激として重要なのは、対象筋線維の張力です。したがって、外部負荷、関節角度、運動範囲、収縮速度、疲労による運動単位動員の変化は、筋線維に届く力学的刺激を変えます。
高負荷運動では、高閾値運動単位が比較的早い段階で動員されやすくなります。低負荷運動でも、疲労が進むと追加の運動単位が動員され、対象筋線維が高い張力を発揮する状況が生じます。
受動的張力
受動的張力は、筋線維が伸張されることで生じる張力です。伸張された筋長では、サルコメア内のタイチン、細胞骨格、細胞外基質などが物理的な負荷を受けます。
実際の運動では、能動的張力と受動的張力は重なります。長い筋長での負荷は、サルコメア、タイチン、細胞骨格、結合組織に異なる入力を与えるため、筋肥大刺激の一部として重要です。
機械刺激受容
機械刺激受容は、物理的な負荷が細胞内の生化学的反応へ変換される過程です。
| 構造 | 役割 |
|---|---|
| サルコメア | 収縮張力と筋長変化を受ける基本構造 |
| タイチン | サルコメア内の弾性要素として伸張に関与する |
| 細胞骨格 | サルコメア、細胞膜、核周辺構造を連結する |
| コスタメア | 筋原線維と細胞膜・細胞外基質をつなぐ構造 |
| インテグリン関連構造 | 細胞外基質から細胞内への力の伝達に関与する |
| 核周辺構造 | 核変形や転写制御との関係が示唆される |
これらの構造は、張力、伸張、せん断、変形を受け、mTORC1、MAPK、Hippo/YAP-TAZ、ホスファチジン酸関連経路などに影響します。
mTORC1との関係
mTORC1は、筋タンパク質合成と細胞成長に関わる主要経路です。力学的刺激はmTORC1関連シグナルを変化させます。
ただし、力学的刺激から筋肥大までの経路はmTORC1だけではありません。mTORC1非依存的な経路、リボソーム生合成、細胞骨格、転写制御、筋損傷修復も関わります。
外部負荷との違い
外部重量が大きいことと、対象筋線維に十分な力学的刺激が入ることは同じではありません。フォーム、可動域、筋長、運動単位動員、疲労、関節モーメント、対象筋への張力配分により、同じ重量でも筋線維への入力は変わります。