筋タンパク質合成は、アミノ酸を材料として筋線維内のタンパク質を作る過程です。筋肥大では、特に筋原線維タンパク質の合成と蓄積が重要です。
骨格筋のタンパク質量は、筋タンパク質合成と筋タンパク質分解の差によって変化します。筋肥大は、一定期間にわたって筋原線維タンパク質の合成が分解を上回り、正味のタンパク質蓄積が起こった結果です。
合成されるタンパク質
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 筋原線維タンパク質 | アクチン、ミオシン、タイチン、トロポニン、トロポミオシンなど |
| 筋形質タンパク質 | 酵素、可溶性タンパク質、細胞質成分など |
| ミトコンドリアタンパク質 | 酸化的リン酸化、ミトコンドリア構造に関わるタンパク質 |
| 細胞外基質関連タンパク質 | コラーゲンなど、筋線維周辺組織の再構築に関わる成分 |
筋肥大の構造的中心は、筋原線維タンパク質の増加です。筋形質成分、水分量、グリコーゲン量も筋サイズに影響しますが、収縮装置としての筋線維肥大を説明する中心は筋原線維の増加です。
翻訳効率と翻訳容量
筋タンパク質合成は、翻訳効率と翻訳容量に分けて理解できます。
翻訳効率は、既存の翻訳装置がどれだけ活発にタンパク質を作るかを示します。レジスタンス運動後には、mTORC1、p70S6K、4E-BP1などの経路を通じて翻訳開始や翻訳制御が変化します。
翻訳容量は、細胞内に存在する翻訳装置の量を示します。リボソーム生合成が進むと、長期的にタンパク質を合成する能力が高まります。
mTORC1
mTORC1は、栄養状態、力学的刺激、成長因子、エネルギー状態などを統合し、タンパク質合成と細胞成長に関与する複合体です。
レジスタンス運動後にはmTORC1関連シグナルが上昇し、筋タンパク質合成、翻訳開始、リボソーム生合成に影響します。アミノ酸、特にロイシンは、mTORC1活性化と筋タンパク質合成に関わる栄養シグナルです。
ただし、mTORC1の活性化だけで筋肥大の全体は説明できません。mTORC1非依存的な経路、機械刺激受容、リボソーム量、細胞核、タンパク質分解も関与します。
筋タンパク質分解
筋量は合成だけで決まりません。筋タンパク質分解も同時に起こります。
主な分解経路には、ユビキチン・プロテアソーム系、オートファジー・リソソーム系、カルパインなどがあります。筋肥大では、合成の増加と分解の調整が組み合わさり、正味のタンパク質蓄積が起こります。
短期反応と長期肥大
運動後の短期的な筋タンパク質合成上昇は重要ですが、それだけで長期的な筋肥大を完全には予測できません。
初期の運動後反応には、損傷修復や非筋原線維タンパク質の合成も含まれます。長期的な筋肥大では、筋原線維タンパク質の蓄積、リボソーム生合成、トレーニングの反復、栄養、回復が関与します。