基本情報
構造
- 分子式
- C21H21N
- 分子量
- 287.4 g/mol
- 分類
- 第一世代抗ヒスタミン薬、セロトニン拮抗薬
性質
- 投与経路
- 経口
- 作用機序
- H1受容体および5-HT2受容体の遮断
- 半減期
- 約1〜4時間(血中からの消失は早いが組織結合性が高い)[1]
- 主な作用
- 食欲増進、アレルギー症状の緩和、鎮静
歴史
誕生と普及
シプロヘプタジン(Cyproheptadine)は、1950年代後半に開発された第一世代の抗ヒスタミン薬です。日本では「ペリアクチン」の商品名で広く知られており、蕁麻疹や皮膚炎、アレルギー性鼻炎の治療薬として古くから使用されています。[1]
医療用途の拡大
開発当初は抗アレルギー薬として注目されましたが、セロトニン拮抗作用を持つことから、その強力な副作用である「食欲増進」が逆に治療目的(小児の食欲不振や、がん・HIV患者の悪液質による体重減少の改善)として利用されるようになりました。現在でも、特定の国や症例において食欲刺激薬として処方されることがあります。[1][2]
ボディビル
極限まで筋肉を大きくする必要があるバルクアップ期(増量期)において、十分な量の食事を摂取できない競技者が、強制的に食欲を高めるための手段として利用することがあります。特に、消化不良や胃もたれにより食欲が減退した際の「最後の手段」として語られることがあります。
特徴とリスク
特徴
シプロヘプタジンの最大の特徴は、脳内の視床下部にある満腹中枢のセロトニン受容体を遮断することで、満腹感を感じにくくさせる点にあります。
- 強力な食欲刺激: 摂取後、短時間で強い空腹感が生じ、通常よりも多くの食事量を摂取することが容易になります。[2]
- セロトニン症候群の緩和: セロトニン拮抗作用を利用して、SSRIなどの影響によるセロトニン過剰状態の緩和に使用されることもあります。
- 安価で入手が容易: 多くの国で一般的な抗アレルギー薬として流通しており、コストが非常に低いのも特徴です。
リスク
強い眠気と鎮静作用
第一世代抗ヒスタミン薬特有の強力な鎮静作用があり、日中の激しい眠気や集中力の低下を招きます。これは激しいトレーニングを行うアスリートにとって、パフォーマンスを著しく低下させる大きなデメリットとなります。[1]
抗コリン作用
口の渇き(口渇)、鼻の乾燥、便秘、尿閉、視力のかすみなどの抗コリン症状が現れることがあります。[1]
精神的影響
長期的な使用は、抑うつ感や焦燥感などの精神的な不安定さを引き起こす可能性が示唆されています。
体重増加の質
食欲が増進して体重が増えますが、それは主に摂取カロリーの増加によるものであり、運動強度が眠気で低下している場合、増えた体重の多くが体脂肪となるリスクがあります。
競技規制上の扱い
シプロヘプタジン自体は、現在のWADA禁止表において禁止物質には指定されていません。ただし、眠気によるパフォーマンス低下のリスクがあるため、競技中の使用には注意が必要です。[3]
出典
- DailyMed: Cyproheptadine hydrochloride tablet (DailyMed / NLM / Overview) ↩
- PubChem: Cyproheptadine. (PubChem / NCBI / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩